ミチノオク In memory

震災以降に閉鎖された石切場のフィールドワークから村に伝わる妖怪伝説のリサーチをもとに制作。飯館村へ訪れる架空の未来の観測者の「日記」を映像インスタレーション作品として制作した。

飯館村に残る狐の伝説や大入道など妖怪の伝説は事実と子供への教訓とのはざまにある語りであった。当時、鬱蒼と茂る木々の奥に何者かが住んでいるという意識や不可解な現状を妖怪の仕業と捉えていた。しかし高度経済成長以降、民間伝承は真実味が薄れてゆき、妖怪の噂は耳にしなくなっていった。私は昔語られていた、あり得たかもしれない事物が、社会変化の中で書き換えられ、過去になっていくことでノスタルジックになっていくこと。それによって顕になる同時代的な価値観や思想について考えた。今は閉鎖されて現実感のない石切場の風景を舞台に「再生」を掲げるこの土地について思いを馳せ、自然への信仰心や伝説を信じることができる未来を想像する。



「ヒカリノトリ-観測者たちの集い」

会場:図図倉庫 (福島県飯館村)

主催:合同会社MARBRiNG

演出・構成:野宮 有姫